AIがAIを衰退させる

AI検索で「サイト訪問」が激減する可能性

最近、ChatGPTやClaude、Geminiなどの生成AIで情報収集する人が増えていますよね。質問をすると、すぐに答えが返ってきてとても便利です。でも、この便利さが普及していくと、懸念すべき変化が起きるのではないかと私は考えています。

従来のGoogle検索では、検索結果から複数のサイトをクリックして、各サイトを訪問していました。でもAI検索なら、チャット形式で質問するだけで統合された答えがもらえます。わざわざ他のサイトに行く必要がありません。

この流れが加速すると、人々がWebサイトを訪問する機会を減らすことにつながっていくと思います。それは、実はAIにとっても衰退を招く結果になる可能性があると考えています。

サイト訪問減少が引き起こす本当の問題

考えなくてはいけないのは、サイト訪問の減少がAIに与える影響です。ブログやニュースサイトを運営している人たちは、主に広告収入で生活しています。人々がサイトを訪問しなくなると、その収入がガクッと減ってしまいます。

そしてこれが最も重要な点なのですが、お金が稼げなくなったら、質の高い取材や調査をする人が減ってしまう可能性があります。その先にある問題は、お金が稼げなくなったら、質の高い取材や調査をする人が減ってしまう可能性があることです。

発信元への導線強化などの対策では解決できないのか

生成AIで回答を生成する際に、もっと情報源となるサイトへのリンクを強調させることはできないかという意見もあります。でも、現実的には難しいと思います。

AI検索の一番の魅力は、一つの会話の流れで欲しい情報が全部手に入ることです。途中で「詳しくはこちらのサイトで」と言われて別のページに飛ばされたら、その便利さが台無しになってしまいます。

様々な情報を統合してアウトプットできることが生成AIのコアバリューなのに、ユーザーを外部サイトに送り出すのはあまり合理的ではありません。これは根本的なジレンマだと思います。

法規制による解決も副作用が大きい

「それなら法律で規制すればいいじゃない」という考え方もあります。例えば、公開情報を無許可で情報源にすることを規制する法整備などです。でも、これも良い案ではないと思います。

せっかく今革命的に技術進歩が起きているのに、その進化にブレーキをかけることになってしまいます。

私が考える解決策:「直接分配」の仕組み

個人的には、AI会社が情報提供者に「直接還元」できる仕組みがあると良いと思っています。これは、サイト訪問に頼らず、情報提供者に直接お金を分配する仕組みです。

具体的には、情報発信者が各AI会社に申請することで、AIに情報源として利用された時に一定の還元を得られるシステムです。

実際に、The AtlanticやVoxなどの大手メディアがOpenAIと契約を結んだことが2024年5月に報道されています。また、CloudflareのCEOであるMatthew Prince氏は、音楽業界のSpotifyのような収益分配モデルをAI業界でも検討すべきだと提唱しています。

このシステムは、情報発信者だけでなくAI会社にとっても長期的には不可欠になってくると思います。AI会社は長期にわたって質の高い情報源を確保でき、持続可能な成長が期待できます。生成AIの便利さを保ちながら、情報を作る人たちにもちゃんと報酬を払うことで、双方がwin-winになれる仕組みだと考えています。

【参考】

AIの持続的発展のために必要な仕組み

このまま生成AIが普及し続けると、一次情報の発信自体が衰退して、巡り巡ってAIの情報源が不足し、回答の質低下を引き起こす可能性があります。これは最終的には情報提供者のみならずAI会社にとっても損失になってしまいます。

現在はAI会社が一方的に有利な状況ですが、これが続くとAI自体の発展が鈍化するリスクがあります。だからこそ、情報発信者の権利を適度に保護する仕組みがあるべきだと私は思います。

それは一方的な規制ではなく、技術の進歩と情報提供者の持続可能性の両方を実現する、バランスの取れた解決策であるべきです。

みんながwin-winになれる仕組みを作ることで、より豊かで持続可能な情報環境を築いていけるのではないでしょうか。