よくAIと壁打ちしている中で、新しいビジネスモデルを思いつくことがあるんですが、自分でやるには向いてなさそうな内容も結構多いので、そういうのは話のネタとしてブログで吐き出していこうと思います。
専門職の「入口」が変わるかもしれない
ここ数年、AIの進化が加速しています。特に文章生成やリサーチ、簡単な画像生成、データ処理など、これまで人間のアシスタントや若手社員が担っていた業務の多くが、自動化できるレベルに近づいてきました。
今でもすでにかなり自動化が進んでいるし、向こう数年以内には今アシスタントと呼ばれる人たちが担っている業務の大部分は代替できるようになるのではないでしょうか。
たとえば、デザイン業界では、これまでは新人が画像の切り抜きやルールに沿った画像素材、バナーの量産などを担当して先輩が専門性の高い業務に集中できるようアシストする一方で、
若手は先輩の仕事ぶりを間近で見て学ぶ…という構図がありました。法務や会計、プログラミング、広告運用など他のホワイトワーカー職でも同じで、単純作業を通じて先輩の負担を軽減しつつ、身近でプロの仕事を見ながら覚えるという構図になっている業界は少なくありません。
しかし、AIがその単純作業を安価かつ高速にこなせるようになると、「アシスタントを雇うより高性能なAIを使った方が安くて早いのでは」という企業側の疑問が強まります。
そうなると、人間は少なくともAIに必要なプロンプトを伝えて、上がってきた成果物の質をある程度見極め、フィルタリングや修正指示を出せるくらいの経験がないと企業がお金を払ってその人を雇うメリットがありません。
しかし、それを行えるスキルは現代ではプロデューサーやディレクター、マネージャーと呼ばれる職種の人が行っているもので、多くの場合、一定の実務経験が必要でしょう。
結果として、未経験者の採用枠が縮小し、企業は「即戦力の中堅以上しか採らない」という判断に傾く可能性が高まっていくのではないかと思います。
アシスタント不要化がもたらす課題
これまでの専門職の育成は、ある種の師弟制度に近い形で成り立ってきました。若手は業務自体は単純作業を担当することになるが、先輩のノウハウを間近で吸収できる。そして先輩はルーチンワークを圧縮して自分の時間をより価値の高い仕事に割ける。双方にメリットがあったわけです。
しかし、アシスタントの役割がAIに置き換われば、この「現場で学ぶ入口」が消えます。企業はもうアシスタントに振る業務がなくなり採用メリットがなくなるので、若手採用を渋り出す。
すると若手は経験を積む場を失い、業界全体で次世代の育成が滞る。これが長期化すれば、中堅以上の層が枯渇し、業界の競争力が落ちていく危険もあります。
もちろん、一部の大企業であれば長期的な回収を見越してそれでも若手を採ることはあるでしょうし、
中小企業であっても飛び抜けたポテンシャルを感じる若手を採用することはあると思います。
しかし、多くの企業は「高性能AIを月額契約する方が、アルバイトや新人を雇うより合理的」という判断に傾いていく可能性が高いのではないかと思います。
実際に、すでに、AIの影響によるリストラの話もちらほら耳にするようになってきていますね。
新たに生まれるOJT型スクール
では、経験を積めない若手はどうすればいいのでしょうか。
そこで今後生まれるであろうビジネスモデルがOJT型スクールです。
これは、この記事を考えるにあたって用意した造語ですが、これまでであればアシスタントが下積みとして行っていたような業務が教育期間などのカリキュラムに移管されて、受講生が現場に近い形でスキルを身につける仕組みです。
あるいは各企業が参加費が必要な中期インターンを企画し、そこで学生などが一定の金額を支払って実践に近い経験を積ませてもらう、みたいなパターンも出てくるかもしれません。
こうした仕組みがあれば若手は就職前に「最低限現場で動ける」状態になり、大学卒業時までに今で言う2〜3年目社員並みの動きができるような中小企業でも採用メリットを感じる人材が育つようになってくるのではないかと思います。
特に専門職採用の間で、こういった実務に近い経験をしたことがあるか?が新卒採用時から問われるような風潮ができていくのではないかと思います。
まとめ
AIが単純作業を奪う未来はほぼ避けられないでしょう。その中で、ほぼ確実に社会的に問題になるであろう事態の一つがアシスタントの教育問題、未経験時の受け皿です。
多くの企業がその問題を自覚するようになったとしても、やはり会社は慈善事業ではないので「赤字リスクを抱えてでもうちはアシスタント採用を続けよう!」という発想には至りづらいです。
おそらくそうなるのは資本力のある会社やそういった方針が一つのブランディングとして機能するごく一部だけでしょう。
そこで、そんな企業のジレンマと社会問題をつなぐ存在として「OJT型スクール」、あるいはそれに類似したサービスが登場してその空白を埋めていくのではと予想しています。
AI時代における人材育成の課題の一つは、「入口の喪失」です。若手が現場で学ぶ機会が減れば、業界全体が先細りしてしまいます。企業が新人を雇えないなら、その役割を外部が担うしかありません。
今後数年で、今回取り上げたようなOJTスクールが生まれるのか、あるいはまた違った形の解決策が広まるのか。いずれにしてもこの問題について何か新しいムーブメントが生まれてくるのではと予想しています。